◇◇ 良きサマリア人法 ◇◇【２００１年２月９日に作成した＜６７回＞より】
朝日新聞２００１年２月８日付け朝刊１３ページのコラムより
皆さんこんにちは。そしてご愛読に感謝します。
アメリカは大統領選挙の選出方法さえも統一されていないほどの
州単位で独立自治が確立した合衆国でありますが、その全ての
州で法制化されているものに【良きサマリヤ人（びと）法】があるという
記事が掲載されていました。
この法律は緊急事態にある人を専門家でもないボランティアが救済し
手当てした時に、たとえその手当てで悪化した時でも、民事責任が
免除されるという内容だそうです。
ご存知のように、「良きサマリや人」とは新約聖書でイエスが隣人愛とは
何かを教えた「たとえ話」です。（ルカ１０－２５～３７）
あるユダヤ人が強盗にあって道に半殺しにされ倒れていました。
そこをたまたまユダヤの祭司が通りかかるが、よけて道の反対側を通り
過ぎていってしまいます。同じようにユダヤ人１２部族の中で唯一、祭司が
選ばれるという特権階級部族のレビ人も通りかかりますが、見ぬふりをして
道の端をよけて通りすぎて行きました。
しかし、当時ユダヤ人から軽蔑され差別されていたサマリヤ人の旅人だけは
哀れに思い彼に近づいて傷の手当てをして、宿屋まで自分で運び込みます。
そして翌日まで看病して、宿屋には介抱のための金銭を渡してでかけます。
もし、それ以上費用がかかったなら、帰りがけに追加分は支払うと約束まで
して。
このあまりにも有名な「たとえ話」によって、【隣人】とは誰なのかという事を考え
させられます。
先日の駅からの転落事故で救助のために二人が飛び込んだ話や、続いて起きた
貧血で転落した産婦を救おうと５人が飛び降り救助したり、自殺しようと線路に
飛び込んだ高校生を救助した話には、全てこの美しき【良きサマリア人】を見出せ
ます。
あの建国当初からキリスト精神にあるアメリカでさえ、あえて【良きサマリヤ人法】を
制定しているのは何故でしょうか？
それは人種のサラダボールと言われている米国では全ての国民がキリスト精神を
心から受入れているとは限らないからだと思います。
人間が制定すべき法律とはそのようであるべきだと思います。神がイエスを通じて
命じた【隣人愛】の律法を、人間世界の中でも出来るようになれば、まさにこの世は
天国になるからです。
日本でも、鉄道事故での二人の殉教的自己犠牲が、多くの人々の善意・良心を呼び
覚まして、多くの献金は集まり、また彼等の殉教があったからこそ、隣人愛精神が
世の中に波及して産婦や青年を救助し得たのだと私は信じます。
日本でも９７年に【良きサマリヤ人法】的な法律制定を検討したそうですが、現状の
民法でも解釈して対応できるとして、見送りになったそうです。
私たちの社会は決して【隣人愛】が乏しいのではなく、【隣人愛】を発揮させにくい
だけなのである事はこの点でも明らかと言えるでしょう。
少年法の罰則強化や奉仕活動の義務化ばかりに懸命になるのでなく、良き行いを
ほめたたえ守る法案こそ、命をかけてでも真剣に検討するべき事であると私自身は
思います。
●人間のうちに善をのばしてやり、彼等の心に善に対する愛好心を注ぎ込むことが
必要である（ヒルティ）
●私たち一人びとりは、隣り人の徳を高めるために、その益を図って彼等を喜ばす
べきである（ロマ書１５－２）
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田中 聡（さとし）
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