◇◇ Trial&Error(試行錯誤)◇◇【2002年6月16日に作成した<第254回>より】
2002年5月19日(日)22:00NHK・BS「光で世界を建築する:安藤忠雄」
5月25日(土)10:00NHK「土曜オアシス:安藤忠雄」を観て
●汝のパンを水の上に投げよ、多くの日ののちに、汝再びこれを得ん(伝道の書11‐1)
●汝の真理を社会の中に投ぜよ、年を経て汝はその偉大な結果を見るを得ん(内村鑑三)
建築家の安藤忠雄さんの活躍にはいつも感動と勇気と希望を与えられます。
安藤さんは東京大学教授になって、その講義録は『連戦連敗』という書名で
出版したそうです。
安藤さんは日本や世界の様々な建築プロジェクトのコンペに申し込みますが、
有名になった今でも「連戦連敗」だそうです。
それは自己の【タレント:個性・才能・可能性】を出し惜しみせずに発揮し
多くのチャレンジをし続けている証明であり、神の喜ぶ道といえるでしょう。
●少ししか蒔かない者は、少ししか刈取らず、豊かに蒔く者は豊かに刈取る
ことになる(コリント後書9-6)
彼の好きな言葉は「無(ゼロ)」だそうです。「ゼロの精神」でスタートして
どんなに連戦連敗してもくじけずに「もう一度、次はあるぞ!」の心意気で
世界の建築界を代表する活躍をしています。
本人は連戦連敗だと言いながらも、安藤さんの世界での功績は高く評価され
建築界のノーベル賞と言われるローマ大学の名誉博士号を戦後6人目として
取得したり、米国建築家協会(AIA)からは世界的貢献者に与える金メダルを
1907年以来世界で59人目で、日本では丹下氏に次ぐ2人目として36年ぶりに
授与されるほどに認められています。
ご存知のように、安藤さんの建築家への道は「独学独歩」だったそうです。
中学二年生の頃に、自宅の2階建て長屋の改築にあたって、大工さんを手伝い
自らデザインした事が【使命・天職】である建築家の道に導かれるきっかけと
なったのです。
自分がデザインした建物が毎日少しずつ出来上がって行く事に感動と喜びが
あったからです。この経験こそが創ることの喜びを知る原点だったそうです。
彼は工業高校の頃に建築の勉強よりもボクシングに興味を持ってしまいます。
そして、見事にプロボクサーになるのです。しかし、すぐに彼は自分の限界を
悟ります。チャンピオンになれるようなボクサーと比較して回復力が不足して
いる自分の体力を痛感したからだそうです。
安藤さんの偉大なところは、せっかく苦労してなった「プロ資格」であろうと
執着せずに捨て去る勇気があるところだといえるでしょう。
建築家として数多くの栄光に輝く現在の安藤さんであっても、過去の実績に
こだわらず常に日々新たなチャレンジをし続ける「ゼロの精神」といえます。
●一切を捨てよ、そうすれば一切を見出す(トマス・ア・ケンピス)
安藤さんは建築家への道を目指しますが、経済的事情と学力不足のために
大学進学は断念します。そして、自分で勉強する独学の道を選ぶのです。
彼は京都大学と大阪大学の建築学科のテキストを自分で入手したそうです。
当時、大学受験には、一日4時間睡眠で合格し5時間睡眠だと落ちるという
「4当5落」のジンクスに従って、20時間ひたすら教材を読み続けて何と
一年間で読破したそうです。
さらに、インテリア、グラフィック、建築学を通信教育を活用して1年間で
集中して見事に受講終了したのです。
「建築は好きだから、好きな事をやっただけ」とあっさり答える安藤さんは
独学で勝ち得た自信がみなぎっていました。
そして、安藤さんが決断したことは西洋建築を独学するために世界に
旅立ちます。1965年、安藤さんが24歳の時でした。船でナホトカに
上陸してシベリア鉄道経由でモスクワに、ヨーロッパを巡ってから
アフリカ、マダガスカル、ボンベイ、アジアへの10ヶ月の旅でした。
安藤さんは近代建築を学ぶために手始めにギリシャのパルテノン神殿を
見学したそうです。そして、彼の建築人生を決定付けた建物はローマの
全ての神に捧げたパンテオンでした。
ご存知のようにパンテオンは直径43メートルの円筒ドーム状の建物で、
天上には直径6メートルの丸い天窓があって光を射し込む構造になって
います。
彼が1度目に訪問した印象は「形の建築」と感じ、2度目に訪問すると
「光の建築」と感じ、3度目の時はミサが行われていて賛美歌を聞いて
「祈りの場」であり「人の心をひきつける総合的建築」であることを
見出したそうです。
それは祈りの対象としての「光」の使い方を学んだ原点となりました。
「光」との出会いで安藤さんは自分の進むべき道を発見できたのです。
安藤さんにとって「建築」とは単なる建物を創ることではありません。
「◆人が心豊かな生活を過ごせる空間を提供すること。
◆意識・価値観を変えるきっかけとなる空間を提供すること。
◆足を踏み入れると、新たな考えのスタートとなる場所を提供すること。」
安藤さんが世界の建物を見学する時には、建築した時の思想を大切にする
そうです。常に謙虚に先人の偉大な建築への教えと思想に学び取り入れる
そうです。「建物は消えても、考えは消えません」と彼は語っています。
●彼は死んだが、信仰によって今もなお語っている(ヘブル書11‐4)
●たえず偉大な思想に生き、些細なことを顧みないように努めなさい
(ヒルティ)
安藤さんはNYテロ事件の跡地の開発プロジェクトにも提案していますが
3万人が座れるスペースで古墳のような円形の芝生の丘を創って、そこは
鎮魂的な嘆き悲しむだけの場ではなくて、地球人として人々が共感できる
対話の空間を目指しているそうです。
今年の10月にはコンペ結果が発表されるそうなので、とても楽しみです。
安藤さんにとって21世紀は「物の時代」から「思想を大切にする時代」へと
移り変わるべきだと確信しています。
何故、安藤さんの建築に対する取り組みがこれほどに精神的であるのかは
彼が28歳の時に建築設計事務所を開設してから長い間、孤独であった事が
幸運であったテレビで教えてくれました。
無名時代には仕事もなく、学友もいなかったので、自分自身との対話のみで
独りで深く考えることが苦にならなくなったからだというのです。
孤独は神なる理想に至る最良のチャンスであることの証明だと思います。
●詩人ダンテいわく、「余は余一人にて一党派を樹立せん」
吾人は神と結ぶべし、人と同胞すべからず、神我と共にありて我は
ひとり全世界と相対して立つを得べし(内村鑑三)
●党を組んで強きを感ずる者は世の人なり。
人を離れて力を得る者は神の人なり(内村鑑三)
●我、神と共にありて我一人は全世界よりも大なり(内村鑑三)
安藤さんの生き方には【使命・天職】を見出しチャレンジする私たちには
学べることがたくさんあります。最初から社会的常識や社会的成功だけを
目指したならば、現在の安藤さんはこの世に登場できなかったでしょう。
先ずは自分自身の中の【ビジョン:理想・夢・志】を大切に守り従う事が
人生の目的とすべきで、初めは孤独でも必ず社会的にも認められるという
素晴らしい証明です。
●どんな良いことも最初に一番良い顔を見せはしない(ヒルティ)
●私たちは善を行うことに、うみ疲れてはならない。たゆまないでいると
時が来れば刈取るようになる(ガラテヤ書6‐9)
●万事をその最善をもって解せよ、最悪において解するなかれ(内村鑑三)
私たちも【ビジョン:理想・夢・志】に向かって「連戦連敗」であっても
くじけずに「Trial&Error(試行錯誤)」を目指しましょう。
必ず、時にかなって【神の愛】による豊かな成果が得られるからです。
●力の許す限り、中絶せずに有益な仕事をすることは、たえず神の近くに
あることと並んで、およそ人生が与え得る一切のうちで最も良い、最も
心を満たしてくれるものである(ヒルティ)
●人生の幸福は困難に出会うことが少ないとか、全くないとかいうことに
あるのではなくて、むしろあらゆる困難を戦って輝かしい勝利をおさめる
ことにある(ヒルティ)
●神の怒りはとけ ― 戸が開かれた ー
あわれな魂は解き放たれた
私の前途にはかぎりない希望と
奇蹟に満ちた時とがある (ヒルティ:出エジプト記34‐10)
たとえ倒れても何度でも起ち上がり【ゴール:人生目的】を目指し続ける
皆さんの勇敢なチャレンジを心より応援しています。
それでは明日も素晴らしい人生をお過ごし下さい。
May grace and peace be with your spirit.
Good luck & God bless you!
メイル歓迎します。
cforum@tanaka.name
田中 聡(さとし)